アンケートの盲点
株式会社インサイト代表 渡辺慶明


■アンケートの盲点

前回は、医院を経営するに際して重要なことは【現実をどのようにとらえるか】という命題であり、そのためには【患者のことは患者に聞く】つまり、アンケートを取ることが大事だと申し上げました。

しかし、このアンケートにはいくつかの盲点がありますので注意が必要です。

■対象者数

第一に対象者数がどれくらいであるかということです。

つまり、せっかくとったアンケートでもその数が10や20では医院の現実を表しているとは言えないからです。

実例を挙げると、ある医院で患者さんの声を聞こうと【目安箱】を待合室に置いて自由に意見を書いてもらうことにしました。しかし、3ヶ月間で集まったアンケート数はわずか11枚でした。

もちろん、アンケートが無いよりはましですが11枚では何の判断もできないのが実情です。

私の経験では、少なくとも対象とする患者数の30%以上のアンケートを取ることが【現実を反映する】ことになると思っています。

30%以上の回収率を確保するためには、それなりの患者さんに対する【インセンティブ】(患者さんのメリット)と、【アンケート記載の環境】が必要となります。

上記の目安箱の例では、ただ待合室に置いただけで、何のインセンティブも働かなかったこと、そして医院内でアンケートを記載させるという環境がアンケート数を少なくした理由といえます。

ある大学でのアンケート研究結果にも報告されていますが、インセンティブの付いたアンケートとインセンティブのないアンケートを比較すると、明らかにインセンティブ付きのアンケートの回答率が高いことがわかっています。

さらに、この研究からは事前にインセンティブ(この場合は粗品を渡す)を付けた場合と、アンケート記入後に付けた場合を比較していますが、この結果は事前に渡したほうが回収率が高くなっています。

一方、アンケート記載の環境からみると、上記の目安箱では、これから治療をしてもらうという心理状態が大きな負担になり、アンケートを書きにくいという状況を引き起こしていると考えられます。

アンケートは、そういった圧力のかからない環境下(たとえば、自宅等)で記載してもらうのが一番です。

■対象は誰なのか?

次に、対象者が誰であるか?ということです。これは現在通院中の患者さんを対象にしているのか、一度来院した経験があるがそれ以降中断している患者さんを含めた全来院患者なのかといったセグメントに始まり、女性患者あるいは高齢者の患者さんといった様々なセグメントがあります。

つまり、この対象(ターゲット)のセグメントは現実のどの部分をとらえるのかということに大きく影響します。

通常は、全体像を把握し、次に核となる患者層をセグメントするようにします。

注意する必要があるのは、現在通院している患者さんに手渡しでアンケートを渡して回答してもらう方式の場合です。

この方式では、医院の評価がかなり高くなる傾向があります。なぜなら、対象がすでに来院している患者さんだからです。この評価をうのみにして、自分の医院はレベルが高いなどと考えてしまうと、競合との競争には勝てなくなってしまいます。

手渡し方式では、自院の強みを把握することが主体であって、弱みは把握しにくいことを知っておく必要があります。

一方、全来院患者を対象とする場合には、アンケートを患者の手元に届ける必要があるので、郵送にしろ宅配にしろかなりのコストがかかるものです。

しかし、無断キャンセルによる中断理由の把握には最も効果的であるとともに自院の弱みを把握できることがメリットです。

両者をうまく使い分けてアンケートを取ることがポイントです。


■自由回答を設ける

よく、アンケートに○×式や選択式が見受けられますが、この方式は回答者が比較的回答しやすいという反面、質問の仕方によっては回答が誘導尋問になってしまうという弊害があります。

たとえば、「当医院のスタッフの態度は? A 良い B 普通 C 悪い」という設問では明らかにBの普通が多くなります。

これは、良いか悪いかの判断基準が明確でないために無難なものを回答者が選んでしまうという傾向があるからです。


もちろん、こういった○×式や選択式が向いている設問もありますが、患者さんの本音を聞き出すには「自由回答」が最も有効です。

作成するアンケートの設問に対する回答をすべて選択式ではなく自由回答方式にすることで、患者さんは自分の言葉で表現しくれます。

また、書いた文字からも感情を読み取ることができるから不思議です。そして言外に含まれた本音を理解することこそ、医院の実態を知ることなのです。

当社でも、お手軽にアンケート調査を実施できるサービスを開始しましたのでご案内します。
<プロフィール>

株式会社インサイト代表
渡辺慶明

1958年
1月福岡県北九州市生まれ

1980年
3月慶應義塾大学法学部卒業
4月株式会社全日空商事入社

1985年
11月株式会社全日空商事退社

1986年
1月株式会社アキラックス入社
7月株式会社アキラックス取締役就任
同社企画部長として数多くの歯科医院コンサルティングを行う

1997年
11月株式会社インサイト 創業 代表取締役就任 コンサルティング業務を手がける
1998年
6月株式会社アキラックス退社

2002年
7月中古歯科医療機器販売を開始

2004年
1月中小企業経営革新法承認企業となる

2004年
12月資本金を1億251万に増資

2005年
1月千葉県ひまわりベンチャー育成基金賞受賞株式会社

インサイトホームページ
http://www.area-one.biz/