院長とスタッフの間にある目に見えない壁 その10
株式会社ビジョナリープラネット代表 ビジョナリーパートナー 和仁達也


こんにちは。ビジョナリーパートナーの和仁達也です。

前回の続きです。(開業したドクター10名との対談内容をシェアしています)
院長とドクターの間に横たわる目に見えないカベについて、話をしています。

スタッフに求める基準は、採用する時点で明確だろうか

ドクター「うちのところは最近、妻が受付として入ったので、彼女がクッションになっていろいろ聞き出してくれています。それから僕は、最初の入り口である採用はものすごく重要じゃないかということを今でも思っています。

例えば、ミーティングをした時にメモ帳を持っているスタッフと持っていないスタッフがいるのですが、基本的にスタンスが違います。メモを取るようなスタッフはやっぱり伸びていくんです。それを(メモを取れと)いちいち言わないといけないものなのかどうか。だからやっぱり素材の良し悪しみたいなものがあるのかなということを思います。

僕もそうだったんだけれど、多くの場合、経営状態があまり良くない時は、できるだけスタッフの給料は下げておきたいんです。でも、ある程度給料を高くしてその分いい人材を取る。そして給料が高い分、そのスタッフには給料以上に働いてもらう、という考え方をした方がもしかしたらスムーズなのではないかという気がしているんです。

ですから、おそらく我々院長がスタッフに期待している仕事の内容・レベルと、募集する際に提示する金額にズレがあるんじゃないか、と思います。

おそらくここに来ている先生方は、歯科医師で例えば1流から5流まであるとしたら、1流を目指していらっしゃる先生ばかりだと思うんです。でもおそらくスタッフにどれだけお金をかけるかというのは、1から5の平均値でやっているのではないかという気がするのですが、どうでしょうか。」

それは、報酬の設定の仕方がそもそも低すぎるのではないか、ということでしょうか。

ドクター「そうです。だから、『うちを辞めたらあなたはもっと報酬が下がっちゃうよ』というような安易なやり方で僕はやっているんですけれども、その方が気が楽です。

新しいスタッフを一人増やす際にいくら提示するかと言うと、おそらく報酬からいうと3人分の衛生士で他の医院だったら4人ぐらい雇えるぐらいの給料設定にするのです。でも、その辺のところをスタッフに分かってもらうのは難しいという気がしますけどね。今、全部うちは衛生士ですけれども、同じ給料基準で今回募集をかけていると、結構、電話がかかってくるんです。

だから極端な言い方をすれば、『今は一人ちょっと使えないスタッフがいるなと思っても、入れ替えればいいかな』と思うようになっています。僕としてはどのぐらいが相場かわからないのだけども、年収で最低350万円ぐらいを考えてやっていると、割合と来るんです。それが多すぎるかもしれないなとは思っているんだけれど、安い人件費で雇って、やっと戦力になったと思った頃に辞められるのでは意味がないという気もしますからね。」

ドクター「先ほどからのお話で、なるほどと僕が思ったのは、やっぱり院長側の基準とスタッフ側の基準に、明らかに最初からズレがあるということです。
だから、こっちの常識は向こうの非常識だし、向こうの常識はこっちの非常識だというところに落ち着くんじゃないかと僕は最近思っています。

例えば、ごみ箱があってごみが落ちていたら、ぱっと捨ててくるのが普通でしょう。言われなければ捨てちゃいけないかのように動かない人もいるからね(笑)。だから本来家庭が教えているべきことまで全部医院で教えていかなければいけないのかと思うと、ちょっと悲しくなりますね。例えば、『人の話を聞く時には相手の顔を見る』ということまで教えてあげなきゃいけないのか、なんて思うわけですよ。

そうすると、『こんなことは言わなくたってわかるだろう』ということがスタッフには分かっていないというギャップがあります。こっちは分かっていると思って普段何も言わないと、『なんでやらないんだよ。なんで、お前、そんなこと分からないんだ!?』とイライラしてストレスがたまる。向こうは、なぜ我々がイライラしているかがわからない(笑)。」

今のはわかりやすい例ですね。つまり最初から前提条件が違うということですね。家庭でしつけをされている部分は当然なされていて当たり前という前提で院長は見るのだけれど、教育されていないスタッフ側からすると、『そんなこと言われなきゃわからないじゃないの』という話になる。

これは多分先ほどの報酬との兼ね合いもあると思うんです。例えば月に25万円払うと言ったときに来る人と、月に20万円払うと言って来る人とでは、やはり志や意欲、素質が違いますよね。つまり、スタッフの層が違いますよね。25万円払うべきことを20万円しか払っていない人に対して期待すると、すごくギャップがある。そこにまたストレスが生まれる。院長としては25万円払っているぐらいのことを20万円の人に期待したいのだけど、現実はそうもいかないということですよね。

一方では、20万円の人に対して、こちらが教育を施して25万円相応の人材に育て上げていくという方法もあると思うのです。そういう発想がないままに、20万円払いながら、25万円相当の働きを期待し続けたらとしたら、これはお互いに相当ストレスになりますよね。その辺のギャップもあるかもしれませんね。

報酬と仕事の価値とのバランスが大切ですね。
<プロフィール>

ビジョナリーパートナー
和仁達也
(株)ビジョナリープラネット代表取締役。さらに(株)ワニマネジメントコンサルティング代表とユメオカLLP会長も務める。歯科医院や中小企業のコンサルティングのほか、会計事務所が顧問先とパートナーシップを築く仕組みづくりを支援している。著書に「脱★ドンブリ経営」「逆ザヤ社員が稼げる社員に変わる法」(共にダイヤモンド社)「キャッシュフロー経営って?」(デンタルダイヤモンド社)ほか多数。

和仁達也 公式ホームページ
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