院長とスタッフの間にある目に見えない壁 その9
株式会社ビジョナリープラネット代表 ビジョナリーパートナー 和仁達也


こんにちは。ビジョナリーパートナーの和仁達也です。

前回の続きです。(開業したドクター10名との対談内容をシェアしています)
院長とドクターの間に横たわる目に見えないカベについて、話をしています。

スタッフとの認識のズレを埋めるには、言葉で伝えなければ……

医院の目指す理想の姿や方針をスタッフに話す際に、以前は全員が辞めた。しかし、今回は残ってくれたスタッフもいた。ということは、言っている中身が以前と全然違っているのですね、きっと。

ドクター「今はきちんと先の方向性が見えた上で話していますからね。以前は自分で何となくそうじゃないかな〜というふうな思いだけでやっていました。だから、つまづくと、考え方が間違っているんじゃないか、何か問題があったんじゃないかと、そういうことですごく悩んだのです。」

そうすると、スタッフに私はこうしたいんだと言っていることは前も今も変わらないんだけれど、以前は「言っていること自体に院長自身迷いがあったから、言っていることとやっていることが違っていた」ということもあったのでしょうか。

ドクター「そうですね。だから前は本当に相手の出方とか顔色をうかがいながらやっていたということはありますね。本気で言わないと、意外に通じないんですよね。微妙なニュアンスの、心のマイナーなものをスタッフは敏感に感じ取る。こちらに遠慮があると相手には伝わっていない。一方、スタッフも、自分の思っていることを言葉にして話すということができていない。そういう訓練がなされていませんからね。だから、お互いに真意が伝わらない。それをミーティングの場できちんと言葉に出して言うということが院長側もスタッフもお互いにできていないんです。それも訓練かなと思うんですよ。」

そうですよね。例えば私がコンサルタントとして、いろんな企業や歯科医院でミーティングに参加しますよね。経営者が加わって行う場合もありますが、スタッフだけのミーティングをやる時もあるんです。そうすると、いろいろ本音が出てきますよ、経営者がいないのをいいことに(笑)。要するに、「うちの院長は、わかってくれません。言っても聞く耳を持ちません。」という言葉を本当によく聞きます。

それはどういうことかというと、2パターンあって、一つは本当に聞く耳を持っていない。本当に聞こうとしない。いろんなことをいっぱい尋ねて、そんなことは自分でわかるだろうという意味で受け付けようとしないというパターンです。

もう一つは、あえてそれは自分で考えさせたい。スタッフを自立させたいという院長の意図があって、あえて聞かないフリをしているという場合もあるんです。つまり、ここで答えを出してしまうと彼女にとって考える訓練にならないから、あえて言わずに考えさせているんだと。

前者は面倒くさいから。いちいちそんなことに答えていられるかということで答えないケース。後者は、意図があって答えないというケースです。そこで後者の場合、その意図がちゃんとスタッフに通じていれば良いのですが、実際には、スタッフに聞くとそうは思っていないのです。すごく不満に思って、誤解しているのです。「ただ、うちの医院長はわかってくれないだけです。聞く耳を持たないんです。いくら言っても聞く耳を持たないから、もう言う気すら起こりません。」という話になっているのです。言う気が起こらないとなると、日頃の不満が全部内側にたまっていきますよね。「そんなに思いつめないで、院長に相談した方がいいんじゃないの?」と言っても、「どうせ言っても受け付けてくれませんから」となってしまうのです。

それを私が院長に伝えますよね。「スタッフさんがこのように言っていますけれど、どうですか?」と。すると院長は「いや、それはね、わざとそうしているです」と言っていました。自立を促そうとしているのです。でも、ちょっと待てよ、どうもお互いの認識がズレているぞ、と思うわけです。結果的にその子がこれ以上ストレスをためこむと危険ということで、あえて面談させてしまうこともあったんです。

そうすると、「ちょっとお互いに認識のずれがあったね。院長はここまで期待しているけれど、あなたのキャパシティからすると、そこまで求めるのはちょっと大変だったんだね。」ということで理解し合えることもあります。院長の立場からすれば、ここまでのレベルを要求したい、という基準があるのですが、スタッフとしては、まだそこまで行くには精神的に強くない、ということがあるのです。
<プロフィール>

ビジョナリーパートナー
和仁達也
(株)ビジョナリープラネット代表取締役。さらに(株)ワニマネジメントコンサルティング代表とユメオカLLP会長も務める。歯科医院や中小企業のコンサルティングのほか、会計事務所が顧問先とパートナーシップを築く仕組みづくりを支援している。著書に「脱★ドンブリ経営」「逆ザヤ社員が稼げる社員に変わる法」(共にダイヤモンド社)「キャッシュフロー経営って?」(デンタルダイヤモンド社)ほか多数。

和仁達也 公式ホームページ
http://www.wani-mc.com/