平成5年以降の入学定員数と入学者数
日本大学教授 歯学部医療人間科学教室 歯学博士 尾崎哲則


毎年この時期、いろいろなところでお会いする歯科医院の院長から、歯科衛生士の募集についてお願いされる。しかし、本校でも延べの求人倍率は10倍以上になっている。そこを、何とかといわれても、難しいところである。
ところで、これだけ求人があるのも関わらず、歯科衛生士学校(大学から専門学校まで)の入学状況をみていると、驚く事なかれと言いたいほどのすごい数字が出ている。これは、全国歯科衛生士教育協議会がおこなったもので、1年前の平成19年度の初めのデータである。全国の歯科衛生士学校を対象に、入学定員数と入学者数の調査をしたところ、56.8%の学校で入学者が定員割れをしていた。地区別では、北海道地区では全学校で割れている。最も定員割れが少ない関東甲信越地区でも約47%の学校でおきている。全国の入学総定員数は7,221人、総入学者数は6,372人であり、充足率は88.2%であった。学校別での入学定員数に対する入学者数みると、最低は8%で最高は148%であった。


平成5年以降の入学定員数と入学者数

過去15年間の歯科衛生士学校の入学定員総数と入学者総数の推移を図に示す。平成5年以降、多少の凸凹があるものの、平成16年までは入学者数が増加していた。定員の方は平成10年から15年までは、ほぼ一定の数値であったが、このような中で、平成15年以降に歯科衛生士学校の開設が始まり、定員が大きく増加した。
歯科衛生士の求人がかなり多くあるため学校の新設がなされたものの、歯科衛生士学校への入学希望者は16年をピークに減少している。これは、大学への全入との関連もあると思われるが、衛生士学校の多くが専門学校であるわりには、きつくまじめな学校であり、現代の学生気質からは敬遠させる領域なのかもしれない。昨今言われているワーキングプアー歯科医に代表される歯科職種のイメージのせいもあろうが、その一方で、新卒歯科衛生士の給与は、同じ年代と比較してかなり良いことは、あまり知られていない。
また、就業している歯科衛生士の離職を防止することにも、積極的な就業状況の改善が歯科診療所から行われたとは聞かない。また、歯科助手と歯科衛生士の職務分担もはっきりせず、歯科衛生士の職務範囲についても十分歯科医師が理解していないのではないかと思えるような状況を歯科界はよしとしてきたような感じである。
今一度、歯科衛生士の賃金体系も含め、歯科衛生士の歯科医療での業務・位置付けをはっきりさせていく必要はあろう。いずれにせよ、歯科医療界の人材提供について、かなり危険な状況になってきていることは否めない。
<プロフィール>

尾崎哲則

現在の専門(福祉・医療を含め)を主にして、歯科医療政策・歯科医療経済、医療管理学

1956 愛知県生まれ
1983 日本大学歯学部卒業
1987 日本大学大学院歯学研究科修了
1998 日本大学教授
2002 日本大学教授・歯学部医療人間科学教室
日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校長

2002-2003 アデレード大学(オーストラリア)客員教授(社会歯科学)

各種委員(2000年以降・主なもの)
2000 医療疾患実態調査精密審査委員責任者(厚生省)
2001 「健康日本21・歯における健康指標の開発と評価に対する研究班」班員(厚生労働省)
東京都歯科医師会地域保健医療常任委員会委員
東京都歯科医師会成人保健医療常任委員会委員
歯・口の健康推進医院(日本学校保健会)

2002 東京都歯周疾患改善指導事業推進委員会委員長(東京都)
2003 東京都大田区「健康太田21」策定委員会副委員長・第3部会長
2004 東京都健康推進事業実施者歯科保健支援モデル事業検討委員会副委員長
東京都歯科保健対策推進協議会 専門部院長
「地域健康増進計画の技術的支援に関する研究班」班長(厚生労働省)
2005 個人情報保護事例集作成臨時委員会委員(日本歯科医師会)
禁煙推進委員会委員(日本歯科医師会)

学会等関連
日本口腔衛生学会 理事・認定医
日本歯科医療管理学会 常任理事
日本産業衛生学会 代議員
日本行動医学会 評議員
全国歯科衛生士教育協議会 理事

最近の著書
8020地域歯科保健活動の現場から ヒョーロン 2001
歯科医院から始める禁煙支援 クインテッセンス 2002
スタンダード口腔保健学 学院書院 2003
人間ドックマニュアル 第3番 医学書院20003
新予防歯科学 第3番 歯科疾患の疫学目標
スタンダード社会歯科学 学建書院 2005