スポーツクラブの建設とともに少しずつですがオープンの準備をしていきました。スタッフもインストラクターを初めフロント担当などと募集をかけ面接を何回も行いました。
面接は必ず社長と同席で行っていました。採用するかどうかはすべて社長が決めており、僕は社長から「どうだ?」と意見を求められるだけでした。社長が社員を面接する際に、僕にいつも言っていたことがあります。「あいつは顔が悪いからだめだ!」と・・・?この人は顔の善し悪しで採用を決めているのか?と不思議に思っていました。採用してからも、「ちょっと来い。」と社長室に呼ばれて「あの社員は顔が悪い。あの顔と一緒だとこちらも一緒にだめになってしまうからクビを切れ!」などという意味不明な命令を受けたことが何度かある。
「顔が悪い。」いったいどういうことなのか?一般に言う美女、美男子と言うことではなさそうだが・・・?
この疑問は未だにはっきりわかっていない。しかし、あれから20年たった今、社長の言っていたとんでもない判断基準が少し理解できてきたような気がします。
そんな状況の中、インストラクターが5名ほどフロントが2名とオープニングスタッフが加わった。僕はインストラクターではなかったので「例のスポーツクラブをよく知っている人(上司?)」のサブマネージャーというような立場で、相変わらず現場会議やスポーツクラブのシステムの準備をばたばたとしていました。
インストラクターのスタッフも加わり、オープン後にお客さんに提供するスポーツプログラムなどの準備もその上司と作り始めていた。この点に関してはまったく僕はわからなかったので加わらなかった。
では僕と言えばオープン時に会員がゼロと言う訳にいかないので、営業をやることになった。営業と言うことはどこかに行って今度オープンするスポーツクラブの説明をして契約をしてもらうという仕事だ。確かにそうだ。誰もいないより最初から少しはお客さんがいた方がいい。しかし、それこそ僕は営業なんていうものはやったことがない。何をどうすればわかるはずがないし、この事に関しても誰も指導などしてくれませんでした。とにかく社長曰く「会員を集めてこい!」という指示というより、命令に近いものがあっただけです。指示のような優しいものではないから必死になって営業方法を考えた。最初に考えたのがスポーツクラブだけにスポーツに興味のある人を探そうと思いました。そこで町にあるソフトチームの名簿やママさんバレーチームの名簿を手に入れ、一軒一軒地図に書き込み、車に資料を積み込んで一軒一軒玄関のチャイムをならして回りました。ところが実際、建物もできていない訳ですから説明するのが非常に難しい。自分自身も実際どんなものかよくわかっていない訳だから、手振り、身振りを交え「プールがあってね・・・こんなマシーンがあってね・・」などと今考えると、よくも毎日飛び込み営業をしていたな〜と関心するくらいだった。結果はそんなに簡単には契約など結んでくれるはずがありません。だって実際、建物すらないのだから・・・しかし、会社にかえるたびに社長に激を飛ばされることは言うまでもない。そこで今度はよし、企業の社長を狙ってみようと考えた。その理由は社員の福利厚生のためなら経費で落とせるので良いのではと考えたのです。ライオンズやロータリークラブの名簿を手に入れ、ことごとく全部回りました。これは以外に何社も契約する事ができました。大きなところではSONYの瑞浪工場まで入ってくれました。
話はそれますが、そのとき話しを聞いてくれたお偉いさんはSONYがまだ東京電気工業だった頃のオープニングの社員でした。その方に会うたびに僕に「SONYのトリニトロンテレビを外国人が日本から買っていく姿をみるたびに涙が出る。まさかこんなに大きくなるとは夢にも思わなかった・・あの頃は森田さんたちが給料を僕らに現金で手渡してくれたんだよ・・」と、何もないところから始めているという事できっと若かった僕に共感して何度も何度も懐かしい話をしてくれたのでしょう。快く契約も結んでくれました・・・しかし、これでは到底まだまだ数が足りないそうで、毎日、準備と同時にほとんど営業活動に僕は力をいれていました。さて企業の社長もすべて回ってしまい、次に回る先がなくなるとまた考える。今度はお医者さん!お金持ちだからきっと入会してくれるかもしれないと、町中のあらゆるお医者さんを回りました。実は第一号で個人で正式に入会してくれたのが偶然にも歯医者さんでした・・・会員番号A1-0001・・・
そのうち回る先がなくなると、じゃあ健康に関するから美容院はどうだ。とかでありとあらゆるお店を回っていました。最後にはあの団地に少し太り気味の奥さんがいるから。という話を聞くと、チャイムを鳴らしてずかずかと居間まで入り込み、こたつの中で半日ぐらい話し込んだ事もなんどもありました。そこまでやってやっと200人(法人会員含む)の会員をオープンまでに契約する事ができました。(その時、営業を行っていたのは僕ともう一人のたった二人でした。その一人は現在のプラネットのサービスセンターで仲間として頑張ってもらっています。)
当初、入会金40,000円 月会費10,000円だったので合計8,000,000円+(4,000,000円×2ヶ月分=8,000,000円)=16,000,000円を集金する事ができました。しかし、実際6億円以上かかっていてさらにこれから固定費やらなんやらとかかる訳だから・・・と考えると気の遠くなるような話です。
その間、例のスポーツクラブをよく知っている上司とその他のスタッフは意見を戦わせながら内容を揉んでいるようでしたが、この時とんでもない事態が起こっていたのです。その上司とその他のスタッフの仲に亀裂が入っていたらしく、この事がオープニングスタッフから社長に苦情として耳に入っていたようでした。確かにその上司は例のスポーツクラブをよく知っているという事で謙虚さに欠け、いつも指示だけで営業など手伝った事など一度もありませんでした。みんなその鬱憤がたまっていたのでしょう。
ある夜、社長がスポーツクラブの社員(その上司を除く)を珍しく、夕食に誘った。僕は嫌な予感がしていたので、僕だけはその誘いを断っていきませんでした。きっと社長はお酒の場でオープニングスタッフからそのたまっている「その上司」の愚痴をとことん聞くつもりだったのでしょう。案の定、たまっていたスタッフはその人に対する愚痴を社長にぶちまけたそうだ。ここまでくれば結果はだいたい察しがつくでしょう。
その翌日、社長は全員を打ち合わせと称して朝早く集めた。とてつもなく早い時間だったと思います。その上司は遠くから通ってきていた為に時間的に集合時間にくるのは無理な時間を社長は最初から設定していたのです。
遅れてくるなり社長はその人に「明日からこなくていい!クビだ!」と・・・その後、バカヤローとかなんとかとても言葉では言えない状況になり、その日にその上司はクビになってしまいました。あらかじめ前日から社長が仕組んだ罠に全員はめられたのです。僕にとっては想定の範囲内でした・・・彼の顔は社長にとって悪かったのだ・・・そして僕の嫌な予感は的中しました。その夜、社長から自宅にくるように連絡があった・・・・。
オープンを1週間ほど前にして、マネージャーであるべき人が消えたのだから、その矛先は当然僕に向けられる予感がしていたのです。それがどんなにいやだったか・・・社長の自宅に行くと社長は僕に「会社の6億5,000万円を小池くんに全て任す。頼んだぞ!」とたったそれだけ言っただけだった。オープンが間近というだけに「かんべんしてください。」とは言えなかった。
その夜、一睡もできないほどの不安が僕の中にわき上がってきました。「みんなが無責任に社長にあんな事いうからだ・・!」と腹を立ててもしょうがないとも思った・・・「これからどうしよう。」
とんでもない事になってしまった・・・つづく
【今月の教訓】
「任される」ということは実態がともなってくればくるほど自分自身に重くのしかかる。まだ形も何もないときに、夢を語ったり、計画をたてる段階が一番楽しい。しかし、いったん計画が実行されていき、そこに頼るものがなくなった時、人はとんでもなく不安に陥る。だからこそ、しっかり、ビジョンを鮮明に描いたり、計画をしっかり練り込んでからスタートする事が本当に大切なのです。その準備をとことんやったとしてもとんでもない事態が起こる事が必ずあると覚悟しておく。むしろその事態を楽しみに待つようにするといいかもしれません。 |
|
<プロフィール>

株式会社プラネット代表
小池和人
激動の時代を「魅力ある豊かな歯科医院経営を目指して」お手伝いしていきます!
株式会社プラネットホームページ
http://www.dentalx.jp/

このコラムで紹介した元総合プロデューサー堀 貞一郎著書の「人を集める」絶版が i Tunes store にてついにオーディオブックとして復活しました。
堀 貞一郎氏が直接「人を集める」を語っています。是非、iPodをお持ちの方は i Tunes storeにてダウンロードしてみてください。価格は900円です。
iTunes store
堀貞一郎「人を集める」 |
|