まさかとは思ったが、任されるという事とは
株式会社プラネット代表 小池和人


どうしようもなくなって、一端、実家に帰った僕は父が人を募集していたという会社に面接に行く事にしました。
地元の商事会社で何をやっているのかは全く知りませんでしたが、「自分が何をしたいのか」などとは言っている状況ではありませんでしたし、「どうせ、また長続きはしないだろう」とさえ思っていました。
面接に行くと、直接社長室に通され、社長と直接の面談だった。社長の第一印象は「なんだか、この人、得体が知れないな〜」って感じでしたが、どうも話を聞いているとこの会社では社長が新しいプロジェクトを立ち上げたらしく、その為に人材を探していたようでした。よく話がみえませんでしたが、ふむふむと話を聞いているうちに即、採用となりました。「明日から出社するよに・・・」という訳で第二の会社人生が始まる事になりました。
そもそもその新しいプロジェクトとは地元に新たにマンションを建設し、その中にスポーツクラブを設置して会社で運営してくというものでした。計画は実行に入っていたのですが、人材がいないという事で探している所に偶然にも僕が地元に帰ってきて入社にいたったという訳です。前の会社と同じで会社が何をしているのかの説明は一切ありませんが、前の会社と違っていたのはどうも社長が自力で立ち上げたワンマン的な会社であることでした。ま〜僕とすれば、お金が全くないわけでしたから、働く場所があるだけありがたいと思っていました。ゆっくり会社の事を理解していこう・・・などとのんびり構えていたのです。
しかし、そんな訳にはいきませんでした。そんなに甘くなかったのです。

直に社長室に呼ばれ、目の前で9階立てのマンションと1階テナント、2階3階がスポーツクラブの何十枚もの図面を見せられました。
そして、社長に言われました「この1年でこれを創る計画だ。小池くん任せた。」????
何を言っているのか全く分かりませんでした「任せた・・・」????
さすがに???でしたが、いきなり言われ、とりあえず「は、はい、わかりました」としか言えませんでした。ここからが僕の苦悩の始まりでした。

まず、計画の土地を見にいくと、建物などは全く立っていません。あくまでも土地は確保してありますが、建設予定地でした。まさか、「任せた」とは立てる所から全て任せると言う事なのか?
その、まさかでした。直に、設計士と建設会社の現場監督と顔合わせの機会をもらいました。

「誰?この人」「僕は何をすればいいんだろう?」・・・しかし、会社側は何も教えてくれません。
その理由は至って簡単。このプロジェクトの為にお前を雇い、そして任せたのだから、お前が全てやるのが筋というわけだ。スポーツクラブが一体何なのか?そしてマンションを立てるという事は一体どういうことなのか?全てが未知との遭遇から長い長い戦いとも言える僕のスポーツクラブ人生がスタートをしたのです。

最初は建物を創る所からスタートです。とにかく毎週のように会社代表で現場会議にヘルメットをかぶり出席、図面をみてああだ、こうだと固定表を見ながら現場監督そして設計施工責任の設計しと打ち合わせ。そこに今度は設備の人やら、備品の人やらが毎日のように代わる代わる僕の元にやってきました。まったく何もわからない僕が1ヶ月で何百の名刺を交換していました。これでいいのか!
そして土台が完成し、建設が始まっていきました。いつの間にか設計士さんや現場監督とも仲良くなり、少しづつですが、工事の進め方や取り巻きの会社との関係が見えてきました。
しかし、この段階ではまだ「スポーツクラブ」というものが何かは全く理解していませんでした。
というのも、その時代、スポーツクラブというものは僕の周りにまったく存在していなかったからです。
「クラブ」と言えば高校や大学の「部活」くらいしか思い当たらなかった時代です。まさか「部活(クラブ)」を創るじゃないよな・・・なんて思ったくらいです。
そこで、この会社が創ろうとしている「スポーツクラブ」なるもものがいったい何なのか?を解明する時期がきたようでした。同じ時期、社長はどこかからスポーツクラブに勤めていたという人を探して連れてきたのです。とてもスポーツクラブに詳しい人という事で、僕にとってはタイミングが非常に良かった。
その人と共にしてスポーツクラブについてあらゆる事を聞きました。そうしている中でスポーツクラブがいかなるものかはだんだんと分かってきたのです。そしてその社長が連れてきた人が完成したあかつきには支配人になるのだろうと思ったら、少し気が楽になりました。何にせよド素人の何も知らない僕には荷が重すぎると思っていましたから・・・それから建設が進むと同時進行で僕はさらにスポーツクラブが何かを解明する為に、当時、東京近辺にどんどん出来始めたスポーツクラブを見に行く事にしたのです。
幸運なことにノーチラスというアスレチックマシーンを導入することを決めたこによりその担当部長のツテで沢山のスポーツクラブを見学する事ができました。
とにかく、初めて見るスポーツクラブは僕の目には新鮮に見えました。そして、働いている人のお話を聞き、パンフレットをもらい、情報収集に一生懸命でした。

そんなある日、横浜のスポーツクラブを見学した時に僕の頭の中に大きな疑問が湧いてきました。
夕方にそのスポーツクラブを訪れるとまずは、驚きました。それはその広さです。広いインドアのアスレチックジムに100を超えるアスレチックマシーンが設置してありました。それだけではありません。ランニングするトラックまであったのです。そしてそのアスレチックジムにビックリする程多くのサラリーマンやOLが運動をして汗を流していたのです。その光景は今でも忘れられませんが、僕はそのとき呆然とし「この人たちはどうして仕事が終わり疲れているはずなのに、またここで疲れるような運動を必死にしているのだろう?何が楽しいんだ?おかしくないか?」なんてことを思っていました。
そして、パンフレットをもらい徹底的な衝撃をくらいました。なんと入会金が100万円と書いてあったのです!「やはり、ここに通っている人たちはおかし。頭がどうかしている。運動をする為にどうしてこんなにお金をはらうのか?僕はずっと学生時代に運動をしてきているがお金を払って運動した覚えは無い。それどころかランニングをするのなら近所の公園でも走れば安上がりだ。」まじめにそんな疑問が起こりました。ますます、僕の会社がやろうとしている「スポーツクラブ」というものに興味がでてきました。
「いったい何故?」この疑問が晴れるのはそれから1年以上先の事でした。

最初は気楽なサラリーマン人生と思っていたが、「任された」という事で思わぬ方向に僕の人生が進み始めていったのです。そして最初に浮かんだ疑問がさらなる疑問を起こさせるとは、その時には自分自身気づきもしていなかったのです・・・・つづく

【今月の教訓】
「任される」ということは「何も分からない」という所から始まる。「分かっているからお前に任せる」という言葉はもっともらしく聞こえるが、これほどの責任転嫁の言葉はない。
何も分からない人に大事な仕事を「任せる」と言える責任を持つことがきっと「任された」人に疑問を持たせ、考える力をつかせる事になるのだろう。




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<プロフィール>

株式会社プラネット代表
小池和人

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