自分自身の未来が見えないと言う事
株式会社プラネット代表 小池和人


無事卒業した僕は、教授に紹介された岐阜にある企業(商社)に就職する事ができました。みんなが就職するから、自分もしなければ・・・そんな考えがあったからか、その時は「ほっ」としていたような気がします。就職先は岐阜市内にある衣料の総合商社です。

最初はよく分からなかったが、オイルショック時に東レ(大手化学)の配下に入っていたようです。それだけに取締役は社長以外全て東レの人たちでした。若かった僕にも部長以下と取締役以上には目に見えない壁があることに気づいていました。僕が配属された部署は企画から制作販売まで行う所で、その中で一番売り上げを上げている部署ナンバーワンの20歳年上の営業マンの下に付けられました。仕事内容も全く分からないまま僕の社会人生活がスタートしたのです。

毎朝、会社に遅れないように出勤し、与えられた机に座るところから会社での一日が始まります。20歳年上の先輩営業マンと目的も分からないまま、社用車であちこち行く毎日でした。いろいろな人に会わせてくれるのですが、その人がどこの誰なのか?何をしている人なのか?まったく理解できないままでした。この会社の全体像や仕事の流れ、そして目指している目標などの説明が全くなかっただけに、毎日自分が何をしているのかの意味すら分からないままでした。

そんな毎日を送っているうちにどんどんこの会社が嫌になっていきました。そのうち、初めてこの会社(部署)の「会議」というものに参加する機会が来たのです。何やら重々しい雰囲気の中で社長をはじめ、取締役の方が会議室の前方にずらっと並んでいました。当時はオーバーヘッド(今ではコンピュータが当たり前)を使い、部長が昨年度のこの部署の成果を一生懸命説明していました。よくテレビドラマの中で見る会議の風景でした。分からないなりに話を聞いていると、この部署はかなり赤字が続いているようで、その理由を一生懸命取締役に説明しているようでした。取締役からの質問はそれだけに厳しいような感じがしました。今までまったくこの部署の実態を誰からも説明を受けないまま、分からないまま来ましたが、入社して2ヶ月目にして会議の雰囲気からもこの部署はもっと頑張らないと「まずいな!」ということは理解できた気がしました。

会議の途中の休憩時間にお手洗にいくと、そこに同じ部署の課長がいました。新人の僕を見るや否やこんな事を言ったのです。
「小池くん、大丈夫。いつものことだから・・・」
「・・・???・・・」
何を僕に言いたいのか?もしかしたら「会議で取締役から部署が厳しく言われるのはいつもの事だから心配いらないよ。ビビらなくても・・・」って言う事を僕に言いたかったのか・・・?この一言で僕のテンションメーターのゲージは最低レベルまで下がっていきました。

信じられない一言です。どう聞いていてももっと頑張らなければ大変なことになってしまう、と考えていた僕にとって、まるで人ごとのようなこの態度はショックでした。しかも僕の部署の課長である・・・

そして次の日、気を取り直して20歳年上の直属の先輩に「僕がこの会社で役に立てる事はありませんか?」「何かやるべき事はありませんか?」と昨日の会議を聞いて焦っていたのか、新人の立場で積極的に質問をするようにしたのです。しかし、先輩はこう答えました。「20年たったら、俺のようになればいいんだ。だから今は何もしなくてもいい!」・・・この先輩は狭い社宅で家族4人と住んでいます。僕は一人で同じ社宅に住んでいる。20年かかっても同じ暮らししかできないのだろうか?・・・そんな馬鹿な話はない!将来の不安と自分の未来がそれでいいのか!という怒りがふつふつと湧いてきたのです。

次の日から会社に出勤しても僕は本当に何もしないようになりました。目の前の電話が鳴っても出ない。上司に呼ばれても、ものを頼まれても返事もしなくなりました。夕方5時きっかりになるとさっさと帰宅するようになったのです。一日中本当に苦痛で、本当に長かった・・・しかし、何もしなくていいと言うのなら何もしない・・・

あまりにも何もしない僕を心配したのか、ある日、課長が僕を呼び出し「どうしたんだ?」と話を聞いてくれました。僕は「上司から今は何もしなくてもいいと言われたので何もしないだけです。今後も何もしないと思います・・・」正直に答えた後、課長は上司を呼んで3人で話し合いをすることになりましたが、その次の日からついに僕は社宅から姿を消し、いっさい会社にいく事をやめたのです。

総務課に捜索隊が結成されました。僕は社宅に帰ることも出来ず、大学のクラブの後輩の下宿を転々としていました。しかし、とうとう捜索隊に見つかってしまい、部署の上司ではなく、東レの取締役に呼び出されるはめになったのです。取締役に事情を全て話したところ、理解していただいたのか「私の部署にこないか」と誘われましたが、結局は丁寧にお断りし、そのまま退社する事にしたのです。

自分の将来が見えてこない・・・自分の立ち位置が分からない・・・僕の社会人としてのスタートはたった3ヶ月で自分自身でリセットしてしまったのです。残り少ない貯金を頼りに実家にも帰れず、ひき続き後輩の下宿での居候生活が始まったのです

【今月の教訓】
目的を持っていなかった僕にとっては先が見えない、全体が見えない、目的が見えない、は3ヶ月も保たない。
<プロフィール>

株式会社プラネット代表
小池和人

激動の時代を「魅力ある豊かな歯科医院経営を目指して」お手伝いしていきます!

株式会社プラネットホームページ
http://www.dentalx.jp/



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